アトムレンズ:SuperTakumar55mmF1.8

2月17日(水)

アトムレンズについて訊ねられたので、持ってますと答えました。

せっかくなのでアトムレンズについておさらいしておきます。

 

アトムレンズとは酸化トリウムという放射性物質を混ぜたガラスを使用しているレンズのことです。酸化トリウムを混ぜるとガラスの屈折率が上がります。屈折率の異なるガラス素材を組み合わせて作るレンズで、高屈折レンズは他のガラスと差別化できて小型軽量化がはかれます。そのため1960年代から70年代にかけて各社で採用されました。

そのなかでも PENTAX SuperTakumar55mmF1.8は標準レンズとして採用され、PENTAXが売れたせいもあって大量に世の中に出回りました。アトムレンズで放射線障害が出るなど危険という噂が流れたこと、フローライト(蛍石)やEDガラスといった異常低分散素材が作れるようになって市場から姿を消しましたが。現在でも中華製の明るさを売りにするレンズには使われているという話は聞きます。

ではどれほど危険かといえば、トリウムが放出する放射線α線(ヘリウム原子核)なのでほとんど飛びません。せいぜい数センチメートル、長くて数十センチメートルで自然放射線以下になります。それに薄紙1枚で遮蔽することができます。現実には裸で数十年抱いて寝ていればなにかしら障害が出るかもしれない・・・レベルです。要は気にすることはありません。日本人は「放射線」とか「放射能」という言葉に敏感なのですが、正しく恐れればいいだけです。

 

ここではPENTAX SuperTakumar55mmF1.8を取り上げます。このレンズには初期型・前期型・後期型があり初期型・前期型はノーマルレンズ。後期型がアトムレンズです。

絞り羽根は6枚でF2.8とF4ではいかにも光条が出そうです。前期型と後期型での見分けはつきません。

 

写真では左が前期型、右が後期型で見分けるポイントは

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02:すぐにわかる特徴はシリアル番号の位置です。SuperTakumarのロゴの前にあるのが前期型、後にあるのが後期型です。フォントも違っていて a の文字が異なります。後期型のほうが現代風フォントになっています。

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04:AUTO-MANUAL切りスイッチ、前期型は A、後期型は AUTO になっています。初期型は絞りリングが逆回転です。

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06:AUTO-MANUAL切りスイッチ、前期型は M、後期型は MAN.になっています。

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08:A-M切り替えスイッチの裏に後期型は5型の数値が刻んであります。それ以外にもビスの位置などよく見れば違いがありますが、表のシリアル番号ですぐにわかります。

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09:オリジナルのASAHI PENTAX- SVと SONY α7RⅢにマウントアダプター経由で取り付けました。PENTAX- SVは横走りのフォーカルプレーン幕がたまに動作不良をおこしますから怖くて使えません(不良になったとき光が入る、そのときはレンズの着脱ができません)

 

レンズが褐色化しているのはブラウニング現象とよばれるもので、中性子によるガラスの変色です。私のレンズはそれほど変色していません。写真では褐色ですが実際に覗けばそれほどでもありません。

 

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