ASAHI PENTAX SVとSP

1月20日 好日です。

先日 友人の羽岡さんより使わなくなったというカメラを頂きました。

ASAHIPENTAX SP+SMC Takumar55mmF1.8 です。他にSONYワイドコンバーターも頂きました。コレクターではありませんが古いメカカメラは面白く、とくにレンズは時代を象徴する工業製品だと思います。カメラ自体は使えなくなってもレンズは半世紀以上経っても使えるので日本の物作りの進化の歴史が固定されて残っています。

 

2006年のトルコ皆既日食を境にフィルムカメラと訣別しましたからこの記事を書く16年前です。それでも現像液の匂いや暗室の赤い光は今でも鮮明に記憶しています。

 

レンズの描写が面白く中古レンズをマウントアダプターでミラーレスにつけて遊んでいると、21世紀のはじめに処分したはずのフィルムカメラですがなんだかんだで6台も戻ってきました。

その中からPENTAX SV PENTAX SP を紹介します。

f:id:nekontaex:20220120101147j:plain

01:左:PENTAX SP 右:PENTAX SV

ちょっとウンチク

一眼レフというシステムは1949年のコンタックスSに搭載されたペンタプリズム(これでウエストレベルファインダーからアイレベルファインダーへ移行)、1954年のアサヒフレックスⅡBに搭載されたクイックリターンミラーで復元性の確保という二大発明がないと成立しません。

さらにシャッターを切ったときだけ絞り込まれる自動絞りが三番目の発明になります。

1950年代はまさに一眼レフがレンジファインダーカメラや二眼レフを蹴落とす時代でした。その完成形が1959年の NIKON F です。

PENTAX SVはPENATX S3の後継機として1962年に登場しました。「V」はドイツ語のセルフタイマー「Voraufwerk」の頭文字です。つまりそれまでのカメラにセルフタイマーは搭載されていませんでした。

 

ASAHI PENTAX SV

f:id:nekontaex:20220120104719j:plain

02:向かって右上 フィルム巻き戻しクランクの下に「V」と刻印されているのがセルフタイマーです。露出計もなくほぼ勘と当時買ったセコニックの露出計を持ち歩いていました。天体写真など露出計不要の被写体ならこれで十分でした。

Supertakumar 55mmF1.8(5群6枚) が標準レンズとしてついています。Supertakumar 55mmF1.8には初期型・前期型・後期型がありこれは後期型をつけて撮影しました

f:id:nekontaex:20220120105318j:plain

03:軍艦部

 

ASAHI PENTAX SP

1964年 東京オリンピックの年に発売された進化形モデルです。

SPOTMATICの頭文字「SP」が型番の由来で TTL測光の露出計が組み込まれています。なぜかスポット測光ではなく平均測光なのが謎です。露出計用のボタン電池が底面に入れられるようになっています。1974までの約10年間生産されつづけベストセラー機でした。

f:id:nekontaex:20220120105623j:plain

04:前面パネルの4本のビスが消え、セルフタイマーが右手に移動しシンクロ接点が左手になりました。脱着可能なアクセサリーシューもついています。SVよりずいぶん垢抜けた洗練されたデザインで、名機だと思います。

レンズは SMC Takumar55mmF1.8がついています。SMCはSuper-Multi-Coatedの略でレンズ表面に透過度を高める処理がされています。

f:id:nekontaex:20220120124043j:plain

05

f:id:nekontaex:20220120124130j:plain

06

f:id:nekontaex:20220120124227j:plain

07:取りだした露出計用ボタン電池(直径約10mm)、緑青で固まっていて磨くと、NationalH-B とあります。ボックスはコインでは開かなかったのでKURE CRC5-56を吹いてドライバーでこじ開けました。

H-B水銀電池は1995年に製造中止になり現在では入手不可能で、別の水銀電池をH-Bに変換するアダプターを入手しないと使えません。

f:id:nekontaex:20220120130632j:plain

08:M42ラクカスクリューマウントのTakumarレンズ

左:Supertakumar 55mmF1.8 前期型

中:Supertakumar 55mmF1.8 後期型

右:SMC Takumae 55mmF1.8 

前期型はSVとセット、SMCはSPとセットです。後期型は別に手にいれたもので、後期型とSMCはアトムレンズの疑いがありますが激しく黄変しているようでもありません。目視で一番濁っているのは後期型です。

f:id:nekontaex:20220120131239j:plain

09:見分け方は簡単です。Takumarの「a」のフォントで初期・前期と後期の違いがわかります。それ以外でもシリアルナンバーの位置が違います。

私は持っていませんが 初期型はピント合わせの距離計に刻まれた赤い菱形が丸になっています。またAUTO-MANU の切り替えスイッチも初期・前期では A-Mとなっています。

M42マウントレンズを使った比較はそのうちやります・・というか過去に個別レンズでやっています。アトムレンズは酸化トリウムを混ぜたガラスで低分散のため現在でも高価なフローライトやEDガラスと似たような特性をもっています。α線を放出するため製造中止になりました。α線は空気中で10cmも飛びませんし紙1枚でも遮断できるので危険はほとんどありませんが、放射線であることに違いは無く怖いと思う人がいるのは事実です。

 

 

 

ねこんたフォトギャラリー