カメラのアスペクト比はどっち?

10月31日

現在の35mm判フルサイズセンサーは36×24mmでアスペクト比(横縦比)3:2 です。同じくAPS-Cセンサーも3:2になっています。
しかしコンパクトデジカメやマイクロフォーサーズなど小型センサー機は 4:3になっているものが多いです。

この違いは何でしょう、少し考えてみました。


3:2が決まった経緯
そもそも35mm判はライカ判とも呼ばれ、フィルムカメラの黎明期(1913年)にドイツ ライツ(Leitz)社のエンジニアであったオスカー・バルナックが考案したものです。当時の縦走りの映画用フィルムを横にして写真用ロールフィルムとして流用しました。諸説ありますが当時のフィルム解像度から必要な画質を満たす面積を計算して36×24mmを決めたという説が有力です。

ロールフィルムの都合で縦は24mmと決まっています。当時のフィルムの解像力を0.03mmとすれば100万画素(当時はピクセル(画素)という発想はなくても十分な解像力を得るに必要な点の集合の意)あれば良いので

24/0.03=817 で 100万/817=1224=36.7mm

100万画素をまずまず 36×24mm に収められます。36mmより短ければ100万画素未満になる、レンズの特性上イメージサークルは円形なので横を伸ばすには限界がありできるだけ短くするために36mmが選ばれたのでしょう。もし映画フィルムの幅が40mmとかなら別のアスペクト比になっていたかもしれません。

この0.03mmは被写界深度で用いられる許容錯乱円の直径として現在も用いられています。余白もいれて映画フィルムのパーフォレーション8個分というのも都合が良かったのでしょう。こうやって作られたライツ製カメラが ライツ・カメラ(Leitz・Camera)が短縮されて「ライカ」(LEICA)になりました。


歴史的に3:2が決められた経緯は偶然も重なってその後フィルムカメラの事実上の標準になりました。もっと大きなサイズがあるにもかかわらす35mm判センサーを「フルサイズ」と呼び、小型センサー用レンズの画角を「35mm判換算」の焦点距離で表すなどフィルムカメラがほぼ絶滅した現在でもデファクトスタンダードになっています。
なお35mmフィルムの本来のアスペクト比は縦走りでスタンダード比が 1.33:1(あるいは1.37:1)なので 4:3 です。

 

4:3が決まった経緯

では4:3はどうやって決まったのでしょう。
上記でライカのロールフィルムカメラが発明される前から映画は4:3でしたから馴染みがあったともいえます。
ここでハーフサイズカメラの登場です。1960年代(正確には1959年)に登場したオリンパス ペン(OLYMPUS PEN)シリーズを始め各社からハーフサイズカメラが発売されました。

「ハーフ」というからにはその2倍の元のサイズがあるわけでそれが「フルサイズ」であってもおかしくはありません、「フルサイズ」はデジタル時代の呼称だと言う人もいますがそんなことはありません。フィルム時代にはあたりまえだったのであえて言わなくても自明だっただけです。
ともかくフルサイズを縦に半分にしたので そのまま構えれば縦構図になります。36×24の半分ですから 18×24 で3:4になります。映画のスタンダードと同じですが映画の方がサウンドトラックがあるため少し小さいです。
さらに1960年代はテレビ放送が一気に普及した時代で ブラウン管テレビのアスペクト比は4:3、1980年頃から普及したパソコンのVGA表示は 640×480=4:3 でした。4:3には馴染みがあったのです。テレビ画面に映す目的で撮られたビデオカメラのセンサーは4:3でつくられ、それを流用したコンパクトデジカメは4:3 が主流になりました。

 

さて使うとすれば

ではどちらが良いのでしょう。そんなものは個人の感覚で自由と言ってしまえばそれまでですが、やはりそれらしい結論は述べておきたいと思います。
本来レンズのイメージサークルはサークルというだけあって円形です。四角や三角のレンズがあってもかまいませんがガラス素材を磨いてつくるレンズは円形が最も作りやすく、四角にするなら円形レンズを切り取るという余計な作業が必要になります。それならフィルムやデジタルイメージセンサーも円にすれば良いのでしょうがフィルムやセンサーは円形にすれば無駄が出ます。平面を同じ形で無駄なく埋めるには三角形・四角形・六角形しかありませんから、定規と直線だけで作れ鋭角の無い四角形が選ばれるのは必然です。
そのなかでは正方形が最も面積が大きく円に近いので空間を無駄なく記録するには正方形が適しています。しかし現実には正方形は選ばれていません(ブローニーフィルムでは正方形もありますが普及しませんでした)、理由はヒトの視覚にあります。

おおよそ
1.人間の視野角は水平約200度,垂直約125度(下75度,上50度)
2.情報受容能力に優れる有効視野は水平30度,垂直20度程度
3.注視点が迅速に安定して見える安定注視野は水平に60~90度,垂直に45度~70度程度
とされていて水平に広く垂直に狭いので正方形より横長なので、正方形センサーだと横が狭く感じます。その比は3:2~4:3の間です。対拡長の画角を同じにして3:2と4:3の画像を貼ってみました。

アスペクト比 3:2の画像

アスペクト比 4:3の画像 イメージサークル像を記録するという意味だけでいえば使用面積の多い4:3が優れています。

しかし実際の画像を見れば、横構図は3:2、縦構図は4:3が好ましく感じます。ヒトの目が上下の視野角が狭いことが原因で脳が横を長く表示する方を好ましく感じるのだろうと思います。横構図で撮ることの多いカメラなら3:2のほうが向いていると判断できます。

現在のワイドサイズのテレビやモニターが16:9(1.78)を採用しているのもその現れでしょうし、映画のシネマサイズ(2.35)やビスタサイズ(1.85、1.66)などもさらに横長です。

 

2023.11.3 添付写真等一部修正

 

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